妊婦の日常

新しい生命を宿している妊婦という存在は、ある意味神秘的です。1人の身体の中にもう1人の人間がいるということは、妊婦たちは妊娠している期間は1人として生きているのではなく、2人として生きているといっても過言ではないでしょう。そして、人間の子孫を残すという意味で妊婦たちはもっと珍重すべき存在だと思われる一方で、決して日本社会は妊婦たちに優しくはありません。
大きなお腹を抱えての外出にはさまざまな障害が待ち受けています。人混みの中動きがままならぬ身体は、激しい人の流れで大きな衝撃を受けることもあります。電車の中では座席を譲ってもらえるとは限りませんし、公共の場はバリアフリー化が加速しているとはいえ、いまだ満足に安全・安心を得られることはありません。何もリスクを抱えていない人にとってはなんてことのない段差でも、妊婦にとっては大きな障害となるのです。
妊婦なのだから、むやみに外出しなければいいのに、という意見ももちろんあるでしょう。確かに、身体のことを考えると外出は危険がいっぱいです。しかし、日常生活を送るために買い物をしに行かねばなりませんし、家計を支えるために産休にすぐには入れず仕事に行かねばならない人もいますし、病院にも定期的に出かけて行かねばなりません。その病院ですら産婦人科の減少が社会的にも問題になっています。出産したくても安心して身をゆだねられる産婦人科になかなか巡り会えないという事態に陥っている妊婦も少なくないのです。妊婦の日常は、生易しいものではありません。