出産難民とは

さきほど少し触れましたが、日本で妊婦が決して住みやすくない理由のひとつとして医療体制の不安定さ、具体的にいうと産婦人科・助産を専門とする医院の減少があります。この体制がしっかりしていて、いざというときに近くに安心できる病院があれば、妊婦はなんの不安もなく出産を迎えることができるはずですが、現状は残念ながらその逆です。これが日本の抱える社会問題のひとつ、「出産難民」です。
これは、安心できる病院で出産をしたくても、それを任せられる出産施設が近隣の地域に存在しない、または施設があったとしても予約でいっぱいとなっており、受け入れてもらえず点々とせざるを得ない、そんな妊婦の悲惨な状況を「難民」に喩えた言葉で、近年よく取り上げられる問題のひとつです。なぜ、日本国内の産婦人科(とくに産科)が減少しているのか、それはなり手が減少しているからです。
産科は非常にナイーヴでリスクの高い診療科であり、24時間態勢で患者を受け入れなければならないことと、周産期は母子ともに生命へのリスクが高いことが要因となります。普段の診療にもリスクが伴い、万が一のことになると訴訟を起こされるケースが多いことなどから、ほかの診療科と比べても劣悪な労働条件が志を遠のかせてしまい、産科医への道を選ぶ人が減少してしまったのです。日本では少子化の問題がクローズアップされることが多いですが、この社会的システムの弱体化も少子化の大きな要因と考えられるでしょう。

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